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業界の
小倉智明を目指すハカセによる鑑定レポート

ハカセによる麻雀プロ診断
鑑定される人 崎見百合プロ
(プロ麻雀協会)
鑑定する人 福地誠(ハカセ)
●著者紹介● 『近代麻雀』誌に数多くの連載を持つ麻雀ライター。
今回の鑑定結果
  • キャラクター ★★
  • テクニック  ★★
  • 熱意     ★★
コメント

 「アマチュアを納得させてくださいね」



■プロが探求する麻雀神秘主義

 崎見百合(さきみゆり)プロは新進気鋭の美人麻雀プロです。この秋に最高位戦から枝分かれした日本プロ麻雀協会に所属しています。プロになって今年が4年目で、このところ急速に増えつつある女性プロでも中核を担う存在といっていいでしょう。

 崎見プロのあだ名はドラ女王です。その名の通り、手牌はいつもドラだらけだといわれます。また役満女王とも呼ばれ、まだ若いのにすべての役満を経験しているともいわれます。役満では一番難しいとされる四槓子ですら何度もアガっているとか。四槓子の話はちょっと信じられなかったので、本人に聞いてみました。

 すると、四つカンしたらOKというルールではなく、ちゃんとタンキ待ちで何度もアガっているというのです。もちろん四暗刻や国士無双のようなポピュラーな役満なら、月に1〜2回は当然のことだとか。そんな爆発物のような打ち手が崎見プロなのです。

 以前所属していた最高位戦のHPでは、こんなふうに紹介されています。
「現在最高位戦に所属している女性雀士の中で、最も実績を残しているのが崎見。タテヅモの流れを掴むのを得意とする」
http://www.geocities.co.jp/Playtown-Toys/5275/yuri.html
 タテヅモとはトイツやアンコになるツモのことで、つまりチートイツや四暗刻の名手なわけですね。そんな実力に可憐な容姿も加わって、女性プロを選りすぐった麻雀ゲームソフトでもメンバーの一員に選ばれています。
http://www.warashi.co.jp/soft_006.html

 崎見プロとは以前から面識もあったので、この程度のことなら知っていました。いや、それ以外にも、飲尿健康法をしているとか、極端なデブ専で理想は水戸泉であることとか、麻雀とは関係ない話だって聞いていました。しかし今回聞いた話には、びっくりしてしまいました。なんと彼女は牌譜フェチだというのです。

 牌譜とは雀賢荘ならログのことです。ネット対戦ならログが残りますが、実際の麻雀はそのまま消えてしまいます。そこで、タイトル戦など重要な対局では、一人の打ち手に一人の採譜者がついて、配牌、ツモ、捨牌などを記録していきます。そして、あとから四人の個人牌譜をまとめて、全体牌譜を作るのです。

 崎見プロは牌譜を可能なかぎり手に入れて、牌を使ってその通りにヤマを積み、一打ずつ検証しているというのです。麻雀プロを名乗る以上は牌譜を読み込み研究するのも当たり前のことですが、実際に牌を使って並べている人がどれだけいるのでしょう。

 牌を並べる作業は驚くほど時間がかかります。私の経験からすると、半荘1回並べるのに最低でも3時間はかかるでしょう。いや、もっとかかる気もします。さらに別な打牌をした場合の展開まで追跡していたら、どれほど時間がかかるのか見当もつきません。崎見プロは暇さえあれば家でそんな作業をやっているとのこと。研究という目的を超えて、フェチの域に達しているようなのです。

 最近では、スカイパーフェクTV!の麻雀番組にハマっているそうです。「MONDO21」という対局番組に、ライバルといえる若手プロたちがよく出場しています。崎見プロは番組をビデオに撮って彼らの手筋を研究しており、たとえば二階堂亜紀プロの打ち筋をチェックした「亜紀」というファイルは、もう3冊たまったとか。熱心な勉強家というべきか、さすがオタク世代というべきか……。どの世界でも専門家は一般人には考えられない作業をしているものです。

 数年前、トッププロや有望な若手プロによって牌理塾というサークルが開かれていました(もう解散しました)。その研究会では、まず対局して牌譜を作ります。そのときに、アガリが出た局でもリンシャン牌まですべて記録して、全体牌譜だけでなくヤマ牌譜まで作ります。そして全員の打ち筋について、正しい一打だったかどうか感想戦を行っていきます。普通ならそこで終わりとなるはずですが、牌理塾がすごかったのはそこからさらに研究を深めたことです。彼らはヤマ牌譜によって再現されたヤマを使って、サイコロの出目が違っていた場合の追跡までしていたのです。

 それはサイコロの目が違っていても、やはり同じ人間がアガリ番だったのかどうかを確認する作業です。ツイてる人が同じようにアガるものなのか確認しようとしたのでしょう。さらにヤマが積まれる傾向にもメスを入れ、同じスジの牌は固まりやすいという仮説などを検証していきました。そういった研究の結果、チーという行為はチーしなかった場合にくらべて、下家に有効牌を送り込む確率が高いという新事実などが発見されたと聞いています。

 こういった内容は麻雀神秘主義とでも呼ぶべきでしょうか。彼らは専門家というよりも極端なマニア集団にも思えますが、趣味でやっているのではなく、あくまで勝つために研究しているのですから、やはり専門家だと思います。なお、この牌理塾に崎見プロが所属していたわけではなく、麻雀プロのなかでもっとも先鋭的な研究をしていた例として取り上げたのです。

 私も若い頃は麻雀オタクであり、有名なアガリ手なら13枚の牌姿を見ただけで、いつどこで誰がアガった手牌なのか、ほぼ即答できたものでした。しかし崎見プロの場合は、「麻雀」オタクというよりも「麻雀プロ」オタクと呼ぶべきでしょう。麻雀プロの「文化」には一般麻雀ファンから離れている部分もあるのです。崎見プロは麻雀プロの牌譜をひたすら研究しているのですから。

 そんな麻雀神秘主義の研究家である崎見百合プロが、唯我独損氏、ハリー氏、ありゃ馬氏という雀賢荘でも名の知れた強豪を相手に、どんな対戦を見せてくれたのでしょう。


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